拓殖大学「教育ルネサンス」改革改善への取組


01-3 教育・研究 - 各学部における実践的な職業教育の充実

実践的な職業教育の充実

-社会インフラプロジェクトにおける
環境社会配慮について-

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プロジェクト実施前の状況(タンザニア道路事業の事例)

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プロジェクト実施の状況(事業前同様、大型哺乳類が移動している)

  • 学部・団体名

    国際学部 国際学科

  • テーマ

    社会インフラプロジェクトにおける環境社会配慮について

  • 実施日

    2017年9月28日

  • 参加人数

    登録受講生(17名)

(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル道路交通事業部道路計画部の黒木浩則氏は、主にODA、とりわけインフラ建設の環境社会配慮分野において多数の経験がある。
社会インフラの整備に伴い生じる環境社会影響というプロジェクト・リスクを最小化し、事前にリスクヘッジする事により、高品質で環境にやさしいインフラを提供することが近年もとめられており、これらの実例を論理面と実践面から講義で説明するとともに、グループディスカッションを通じて、演習を行うこととした。
さらにODAに関する開発コンサルタントの実際のプロジェクト活動を説明し、職業・キャリア教育支援の一助とした。
主な内容は以下の通りである。

I. ODA及び環境社会配慮に関する概要説明
1.ODAにおけるプロジェクトサイクルと環境社会配慮
ODAの社会インフラ整備(例:道路、橋梁、港湾、鉄道、空港、建築関連)にあたっては、上位計画(マスタープランMP)、実施可能性調査(フィージビリティ調査FS)、設計、施工管理、維持管理というプロジェクト・フローとなっており、いずれのフェーズにおいても開発コンサルタントは業務を行っている。
環境社会配慮の具体的な成果として、MP段階では戦略的環境アセスメント(SEA)、FS・設計段階では環境アセスメント(EIA)が求められ、施工・供用段階ではEIAの実施が必要となる。

2.環境社会配慮の必要性とその内容
我が国が途上国への無償・有償資金協力によりインフラを整備する場合、必ずJICA環境社会配慮ガイドラインの適用が義務づけられる。相手国の環境法令やガイドラインに加え一定水準以上の質の確保を行うために同ガイドラインの実施が求められる。環境社会配慮の一つである、環境アセスメントの実施は、スクリーニング、スコーピング、調査、予測、評価という一連の流れがあるが、最も重要なプロセスは、スコーピングである。スコーピングでは、JICAガイドラインの場合、30程度の環境社会項目を扱っており、プロジェクトの活動要員とマトリクスでクロスチェックすることで影響のあるなしや影響の程度を想定する。

3.環境社会配慮の事例
黒木氏が携わった業務のうち、タンザニア国の道路改良事業の環境社会配慮について説明がなされた。本プロジェクト地域には、国立公園、世界自然遺産等があり、大型哺乳類等の生息保全が主な課題となった。これらの課題に対し、十分な調査を行い、設計に反映することで、これらの動物種に影響の少ない道路整備がなされた。また、交通安全の側面からも、安全キャンペーンなどが行われ、自然のみならず社会面にも配慮したプロジェクトとなったことが説明された。

II. グループディスカッション
I.における背景を理解しつつ、環境アセスメントにおいてもっとも重要なスコーピングに関する演習を下記の条件で行った。

● プロジェクト実施地域:ミャンマー国 カイン州
● 事業内容:既存道路改良によるバイパス整備
● 周辺土地利用:主に水田
● 課題:想定される主な影響とその緩和策についてグループ内で議論し、3分程度の発表を行うこと

17名を3グループに分割し、ディスカッションを15分程度行いそれぞれ発表が行われた。主に用地取得に関する影響が大きく、その対策として被影響者との十分な議論と合意形成がその対策として必要であることが、結論としてまとめられた。

III.所感及び出席した学生へのメッセージ
短い時間の中で、講義とグループディスカッションとなったにも関わらず、国際協力あるいは国際開発に強い興味をもって聴講している姿勢が学生から感じられ、大変頼もしく見えました。
今後、学生のみなさんの一部は、国際分野における職業を選択されることとおもいます。どのような職業・活動においても、今や必ず「環境配慮」という点が議論されます。そのような機会においては、本日の講義を思い出していただければ良いかと思います。   

April 3, 2018 1:06 PM